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- ニキビ(膿疱性ざ瘡)、酒さ(rosacea)の漢方治療
■ニキビ(尋常性ざ瘡・膿疱性ざ瘡)
ニキビ(尋常性ざ瘡)は脂腺性毛包が侵される疾患です。顔や胸背部にできやすいのはこの部分に脂漏性毛包が多く集まっているからであり、思春期に多発するのは、男性ホルモンの分泌が盛んになり、脂腺の活動が亢進するためです。
(1)男性ホルモンの脂腺刺激作用による皮脂の分泌亢進
(2)毛包漏斗部の角化障害による毛孔の狭窄
(3)毛包漏斗部のアクネ桿菌の存在
これら3つの因子が基盤となり、このほか、遺伝的素因、年齢、ストレス、食事、機械的刺激、化粧品などの内的、外的因子が複雑に関与して発症します。
漢方医学は、ニキビの状態と、全身の状態からいろいろの漢方薬を選択します。もちろん薬だけでなく、洗顔、食事などの日常生活の改善も大切です。
■漢方薬の作用
男性ホルモンを抑制 | 芍薬甘草湯、十味敗毒湯 |
抗炎症作用 | 清上防風湯、黄連解毒湯、白虎加人参湯 |
化膿性丘疹 | 排膿散及湯、荊芥連翹湯、十味敗毒湯 |
女性月経周期 | 当帰芍薬散、桂枝茯苓丸(+薏苡仁)、桃核承気湯 |
胃腸虚弱 | 安中散、六君子湯、半夏瀉心湯 |
冷え性が強い | 当帰四逆加呉茱萸生姜湯、人参湯 |
ストレス型 | 四逆散、半夏厚朴湯、加味逍遥散、抑肝散 |
浮腫や多汗を伴う | 五苓散、猪苓湯、三物黄莟湯 |
便秘 | 大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、大黄甘草湯 |
外用抗菌剤とディフェリンゲルやベピオゲル、エピデュオゲルで炎症反応を抑えながら漢方薬で体質を整えるといった西洋薬との併用も有効的です。
ただし、抗生物質の内服は最小限にとどめた方が良いと思います。
治療開始から2カ月ほど経過を観察します。改善傾向が見られない場合は、他の処方を考えます。ただし、ニキビが治る前に体質が改善していることもあるので、判定は全身の状態を観察して慎重に行います。
■粉末の漢方エキス剤が苦手な方
飲みやすい錠剤の漢方もあるので、医師にご相談ください。
十味敗毒湯錠、黄連解毒湯錠、桂枝茯苓丸錠、白虎加人参湯錠、桃核承気湯錠、ヨクイニン錠
■女性の臨床症状による漢方エキス剤処方例
1.重症
炎症が主 | |
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丘疹と膿疱がある: | 排膿散及湯+清上防風湯 |
膿疱が多い: | 排膿散及湯+小柴胡湯 |
化膿が多い: | 排膿散及湯+白虎加人参湯 |
炎症が強い: | 上記に桔梗石膏を併用 |
膿疱が主 | |
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皮脂が多い: | 排膿散及湯+芍薬甘草湯 |
生理で増加する: | 排膿散及湯+桂枝茯苓丸 |
生理で悪化する: | 上記に芍薬甘草湯を併用 |
便秘で悪化する: | 排膿散及湯+桃核承気湯 |
丘疹が主 | |
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皮脂が多い: | 清上防風湯+芍薬甘草湯 |
生理で悪化する: | 清上防風湯+桂枝茯苓丸 |
便秘が悪化する: | 清上防風湯+桃核承気湯 |
2.中等症
膿疱が主 | |
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皮脂が多い: | 十味敗毒湯+芍薬甘草湯 |
生理で悪化する: | 上記に桂枝茯苓丸併用 |
便秘で悪化する: | 荊芥連翹湯+桃核承気湯 |
紅斑が多い: | 荊芥連翹湯+桂枝茯苓丸 |
丘疹面疱 | |
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皮脂が多い: | 芍薬甘草湯+桂枝茯苓丸 |
生理で悪化する: | 上記に当帰芍薬散を併用 |
便秘で悪化する: | 桂枝茯苓丸+大黄甘草湯 |
紅斑が多い: | 芍薬甘草湯+白虎加人参湯 |
痒みがある: | 芍薬甘草湯+黄連解毒湯 |
体力ない | |
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膿疱がある: | 十味敗毒湯 |
月経困難あり: | 十味敗毒湯+当帰芍薬散 |
胃腸虚弱あり: | 十味敗毒湯+半夏瀉心湯 |
ストレスあり: | 加味逍遥散や四逆散併用 |
3.軽症
部位症状 | |
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丘疹と面疱がある: | 桂枝茯苓丸薏苡仁湯 |
膿疱が散在している: | 排膿散及湯を併用 |
頬部に丘疹がある: | 十味敗毒湯+ヨクイニン |
口囲に丘疹がある: | 黄連解毒湯+半夏瀉心湯 |
他の症状 | |
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生理で悪化する: | 桂枝茯苓丸、当帰芍薬散 |
便秘で悪化する: | 桃核承気湯 |
胃腸虚弱がある: | 半夏瀉心湯、六君子湯 |
むくみがある: | 五苓散、三物黄莟湯 |
冷え症がある: | 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 |
ストレス | 加味逍遥散、四逆散 半夏厚朴湯、抑肝散 |
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酒さ(rosacea)の漢方治療
■酒さ
酒さ(rosacea)は中高年の顔面に発赤と血管拡張をきたす慢性炎症性疾患です。難治性で、女性に多く、原因不明な疾患です。重症度によって3段階に分類されます。
<皮 膚 症 状> | |
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第1度 | 鼻、頬、眉間、顎に紅斑が生じ、毛細血管拡張がみられます。 皮脂分泌を伴うかゆみ、ほてり感、易刺激性などがあります。 |
第2度 | 第1度に加えて、ニキビのように丘疹や膿疱が出現します。 皮脂分泌がより強くなり、病変部が顔全体に広がります。 |
第3度 | 丘疹や膿疱が融合して腫瘤状になり、やがて、ミカンの皮のような凹凸不正となります。 |
第1、2度は中年以降の女性に多く、第3度にまで進行するのは男性に多いようです。 酒さによく似た病変に酒さ様皮膚炎があります。これは湿疹・皮膚炎の基礎疾患にステロイド外用剤を長期間使用し続けたために起こる医原性の疾患であり、酒さとは区別して治療します。
■漢方治療
漢方医学的に頭頚部は陽が盛んなところで、熱を帯びやすく、各種の熱は上昇して顔面に集まり、皮膚表面の血絡を赤く目立たせます。そのため、治療には駆瘀血剤や清熱剤が必要となります。
当院では下記の漢方エキス剤にメトロニダゾール外用剤(MNZゲル)やビタミンC外用剤(VCローション・VCDゲル)を併用して治療しています。
院内製剤…メトロニダゾール(MNZゲル):1,000円、VCDゲル:1,200円
症状別漢方エキス剤処方例
<症状> | <漢方エキス剤> |
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◆軽症 | 桂枝茯苓丸、加味逍遥散、温清飲 |
◆中症 | 白虎加人参湯、黄連解毒湯、荊芥連翹湯、桔梗石膏 |
◆重症 | 加味逍遥散+白虎加人参湯 桂枝茯苓丸+荊芥連翹湯 桂枝茯苓丸+黄連解毒湯 大柴胡湯+黄連解毒湯 |